2020年度相談員研修Q&A
2021年1月9日開催・地盤品質判定⼠会関⻄⽀部相談員研修会
『相談員に求められる知識とツール』(講師:太田英将 判定士)
への質問&回答についてお知らせいたします。
(質問 Q1) 【回答 A1】Q1とQ2は類似した質問ですので、Q2の回答も参照してください。 ご質問のことはおっしゃるとおりです。色々なケースがあると思います。側方抵抗モデルでは、過剰間隙水圧を、「過剰間隙水圧高」で評価していますが、「過剰間隙水圧比」のほうが適切かもしれません。「比」で評価すれば、厚い盛土ほど間隙水圧は上昇しやすくなります。 例えば、東日本大震災で福島第一原発に地上電力を供給する「夜ノ森線No.27鉄塔」が盛土の崩落で倒壊し、電力供給不能となった事例を紹介します。普通に2次元解析すると、安全率は1以上になり倒壊しないが、揺れの影響で土質強度が低下したと仮定すると、うまく説明できるとしています。この理屈だと「後付で」何でも説明できてしまい、次の災害防止に繋がりません。要するに個別箇所対応であれば、パラメータをいじってどんな説明でもできてしまいます。(ちなみに側方抵抗モデルでは、この斜面に4つある谷埋め盛土のうち、崩壊した盛土のみが安全率1を大きく下回っていました) このため現象のメカニズムを解明しようとすれば、様々な形状の盛土の変動・非変動という「答え」が最大限合う理屈を導かねばなりません。 |
(質問 Q2) 【回答 A2】 当時は、この解析法を開発する前提として、下記の条件がありました。 (2)事前に得られる情報は、谷埋め盛土が入っている器の形状(幅・深さ・長さ・地山傾斜角・面積)と、地山傾斜角と相関関係が認められた盛土内地下水位の情報のみ。土質に関する情報はない。 (3)釜井ほか(2000、2002)の研究で、谷埋め盛土では谷の幅/深さ比(W/D)≒10が地震時変動の有無の境界となっており、W/D>10となると変動しやすいことがわかっていたので、これを簡易な力学モデルにする。 (4)盛土が入る器(盛土形状)と、地山勾配から推定される地下水位情報のみを使って、実際に大地震で発生した変動・非変動が分離できれば「使える方法」となり、分離できなければ「使えない方法」として棄却される。(結果的に「使える方法」と評価された) (5)盛土の強度が地質によって大きく異なると、それぞれの地域でモデルを設定する必要があり、予測には使えないことになる。 この国交省発注業務で、阪神・淡路大震災で調査された盛土の変動・非変動を解析した結果、変動・非変動を分離することができ、少なくとも阪神・淡路大震災の実現象に対しては「実用的なレベルで地震時の安定性評価が可能であると判断できる」とされました。 2006年3月に改正宅造法が成立し、およそ半年後に大規模盛土造成地の変動予測ガイドラインが策定されましたが、その際に第2次スクリーニングにおいては、側面抵抗を考慮できない「2次元断面法を原則とする」に突然変更されました。側方抵抗モデルについては、第2次スクリーニングを行う盛土の優先度を決める方法論の一つと位置づけられるにとどまりました。なおガイドラインでは、第一次スクリーニングに用いる参考的な手法として当初から記載されていました。最新版(2015年5月版)でも、「その他の方法」として記載されています。側方抵抗モデルは、大地震による盛土の実物大実験結果を統計的な処理を行って、阪神・淡路大震災の実現象に対して高い再現率を持っていましたが、実測値を用いた安定計算法ではなかったことが、第2次スクリーニングへの適用除外に影響したものと考えられます。(盛土の強度が地域や地質によって異なると予測に使うには適さないから) 2011年3月に発生した東日本大震災においても、この側部抵抗モデル(途中から呼び名が「側方」から「側部」に変わることがありますが、同じ意味です)の予測の正答率が高いことが明らかになりました(太田ほか(2011b))。 1.そもそも盛土には地下水を排除するために公的基準で決められている暗渠が入っているにも関わらず、ほぼすべての盛土に飽和地下水がたっぷり存在するのはなぜか?(これは相当重い問題です。地下水が暗渠で排水されていたら、そもそも滑動崩落現象などないからです) 法改正に至る道のりについては、太田ほか(2011a)に記載しています。この中の集計値等は、NPO法人都市災害に備える技術者の会(2006)で実施した内容が多く含まれています。
【参考資料・文献】 【参考図書等】 |
(質問 Q3) 【回答 A3】 |
(文責:太田英将)