《地盤品質判定士コラム第10回》瑕疵とは

2022年8月30日

瑕疵とは

 みなさん、「瑕疵(かし)」という言葉はお聞きになったことはあるかと思います。
「瑕疵」とは、簡単に定義すると「目的物に何かしらの欠陥があり、通常あるべき品質を欠いている」ことをいいます。
この「瑕疵」という言葉が、2020年4月1日に施行された改正民法では「契約不適合」と改正されているので、以下のとおりポイントを解説いたします。

改正民法による、関係法律の改正

 2020年4月1日に施行された「改正民法」では、「瑕疵」は「契約不適合」となりました。
それに伴い、関係法律の改正前と改正後の「瑕疵」に関する記載内容は下記のように改正されています。

改正前民法の「瑕疵担保責任」とは?

 住宅地盤が関わる住宅業界で「瑕疵」が絡むのは、住宅の売買契約等の「瑕疵担保責任」です。
改正前民法では、売買物件に「隠れた瑕疵」が存在する場合は、売主は瑕疵担保責任を負うものとされ、その瑕疵担保責任の内容は、原則として損害賠償を行うか、もしくはその契約の目的を達しない場合に限り契約の解除が認められるというものでした。この瑕疵担保責任は売主が無過失(損害の発生について故意ではない、または注意義務違反がない)の場合であっても発生するものとされていました。

 このような瑕疵担保責任という概念が認められた背景は、土地・建物売買契約等の場合は契約の目的物がいわゆる「特定物」であるためです。売主の債務は特定物である当該土地と当該建物を引き渡すことなので、もし欠陥のある土地や雨漏りのする建物を買主に引き渡したとしても、売主は自己の債務を履行しており、買主に対して債務不履行はないと考えられてしまいます。つまり、売主は瑕疵のある土地や建物を引き渡したとしても、売主としての債務は履行したことになり、債務不履行責任を負わないことになりますが、そのような結論は、瑕疵のある土地建物を引き渡す売主と、瑕疵の存在を知らずに売買代金を支払う買主との間に経済的な不公平を生ずることになってしまうため、法が特別に定めた責任(法定責任)として設けられたのが「瑕疵担保責任」です。

改正民法の「契約不適合」とは?

 改正民法で「瑕疵」は「契約不適合」と改正されました。契約不適合とは、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」ことをいいます。
改正前民法で「瑕疵」とは、「当該売買契約締結当時の取引観念上、その種類のものとして通常有すべき品質・性能、又は当該売買契約に基づき特別に予定されていた品質・性能を欠くこと」であると判断されてきました(平成22年6月1日最高裁判決より)。この判例の定義からすると、改正民法の「契約不適合」とは、従来の判例上認められてきた「瑕疵」の 概念とほぼ同様の内容であると考えて問題はないと思います。
契約不適合責任においては、「瑕疵」や「隠れた」という概念は直接の要件とはされていません。改正民法における契約不適合責任では、客観的に瑕疵といえるか否か、それが隠れたものであるか否かを問題とするのではなく、引き渡された目的物がその種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しているか否かが問題になります。

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)関連

 改正民法により「瑕疵」は「契約不適合」になったことにより、関係法律が「瑕疵」を「種類、品質又は数量に関して契約の 内容に適合しない状態をいう」と改正していますが、品確法については、「瑕疵」という用語が残され、同法2条5号において「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態をいう」と定義されることになります。また、品確法では、新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分又は雨水の侵入を防止する部分の瑕疵について、改正民法415条(債務不履行による損害賠償)、541条(催告解除)、542条(無催告解除)、562条(買主の追完請求権)及び563条(買主の代金減額請求権)に規定する担保の責任を負うと定められています。

特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)関連

 2008年4月に「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(住宅瑕疵担保法)が施行されました。
この法律では、新築住宅を供給する施工業者や売主は、構造躯体と雨水浸入部分の基本構造部に欠陥が見つかった 場合の10年間の瑕疵担保責任を果たすために必要な資力を、「予め供託金を積んでおく」、もしくは「住宅瑕疵保険法人が提供する保険に加入する」のいずれかで確保することが義務付けされています。買い主は施工業者や売主が倒産した場合や、支払能力不足を理由に補修を拒否した場合には、供託金の還付や瑕疵保険の保険金の支払いを受けることができるようになっています。 この法律は品確法が前提になりますので、この法律上での「瑕疵」は、品確法で新設された「瑕疵」の定義規定を引用することになります。

【参考資料】
・国土交通省「住宅業界に関連する民法改正の主要ポイント」
・一般社団法人住宅金融普及協会ホームページ

大串 豊

現:地盤品質判定士理事・地盤品質判定士会 総務企画委員長
所属企業:M&Kコンサルタンツ株式会社 取締役
専門分野は、住宅関連に関する損害保険手配および保証制度構築。
住宅地盤業者団体向けの地盤保証制度構築を行い、現在も運営に携わる。
主な著書に、「法律家・消費者のための住宅地盤Q&A」(共著)がある。
また編集委員として「地盤と建築をつなぐー地盤品質判定士をめざして」の編集にも参加。
地盤品質判定士の社会貢献拡大と社会的地位の向上を目指し、日々活動を行っている。