《地盤品質判定士コラム第12回》 土や地下水の汚染による健康問題について

土や地下水の汚染は何故おきるのか?

 土や地下水の汚染と聞くと、2016年頃に話題となった築地市場移転問題があった。これは、築地市場を江東区の豊洲市場に移転する契機に発覚した問題だった。豊洲市場土壌地下水汚染問題などと報じられ記憶に新しい。豊洲市場は東京ガス工場跡地であり、専門家会議の調査で、環境基準の4万3千倍のベンゼンなど高濃度の汚染が広範囲で確認された。

 土壌地下水汚染は生活を豊かに便利にするため工場跡地などの再開発が活発になるに伴って、六価クロム・水銀・PCBによる土壌汚染や、有害物質を含む廃棄物の不法投棄による土壌汚染や地下水汚染が、近年市街地でも顕在化してきた。また、土や地下水は世界中のどこの国でも生活の基盤となる資源と考えられるが、人の手が入っていない状態でも、自然由来として微量に汚染物質が含まれている。

 上記のようなことから日本では、2003年に土壌汚染による健康被害を未然に防止するため「土壌汚染対策法」が制定・施行された。

年度別の土壌汚染判明事例件数(土壌汚染対策法の対象となったもの)

健康に影響があるのか?

 土壌汚染対策法の中では、健康被害をもたらす可能性がある物質の基準値というものを制定している。それに示されているのは、①揮発性有機化合物・②重金属類・③農薬類についての基準値が指定されている。 基準値には地下水など経由して摂取した場合のリスク(土壌溶出量基準)と口などからの直接摂取によるリスク(土壌含有量基準)がある。

 土壌溶出量基準は、1日2Lの地下水を飲用することを想定し、地下水の環境基準 や水道水の水質基準と同様の考え方により基準値が設定されている。それは一生涯を通じた毒性(慢性毒性)を70年間蓄積する前提で考慮されている。

 土壌含有量基準は、一生涯(70年)汚染土壌のある土地に居住した場合を想定しており、急性的な影響も問題のない濃度レベルとなるように設定されている。それは1日当たりの土壌摂食量 子ども(6歳以下)200mg、大人100mg として計算されている。

 このように、法では長期間の有害物質の摂取を想定して、健康被害の防止の観点から定められているが、リスクとしては一生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響が現れないと判断されるレベル、またはリスク増分が10万分の1となるレベルとされている。しかし、土壌汚染に関わる健康被害の歴史としては足尾銅山鉱毒事件やイタイイタイ病などがあったことも事実である。近年土壌汚染調査の義務化により、汚染土壌の拡大を未然に防ぐことができるようになってきているが、今後も動向を注視していく必要がある。

掛川 智仁

地盤品質判定士会幹事。現在、土質試験を中心としたコンサルティングを展開している。地盤品質判定士の広報として日刊建設通信新聞社の特集に参画。地盤品質判定士の知名度向上に向けた取り組みを行っている。