《地盤品質判定士コラム第14回》不同沈下の原因
不同沈下の原因
不同沈下の原因は、地盤が影響或いは建物の構造上の問題ですが、地盤が影響するものが多いのが実情です。主な原因としては、次のようなものがあります。
a. 池や沼地、田んぼを埋立てた地盤
b. 軟弱層が堆積している地盤
c. 切土と盛土の境目がある地盤
d. 起伏に富む地形を平坦化した地盤
e. 瓦礫や廃棄物等が埋ってる地盤
f. 盛土材や締固めが不均一な地盤
g. 建物に不具合がある場合
地盤に関わる不同沈下の原因について詳しく説明しますが、地盤はどのように出来ているのかをまず知って頂きましょう。
地盤って、何で出来ているかご存知でしょうか?
答えは、「土粒子」と「水」と「空気」です。
土粒子とは目に見える土が一番細かくなった時の粒の大きさで、粒が大きい順に石、礫、砂、シルト、粘土に区分されます。
実際の地盤はこれらが混ざり合っており、礫や砂の割合が多ければ礫質土や砂質土、砂よりシルトの割合が多いと砂質シルト、粘土の割合が大きいと粘性土と呼ばれています。軟弱地盤は、粘性土でも細粒分が多く含まれ、水も多く含まれており、沈下しやすい地盤と言われています。
地盤は水が多いと泥状になり、また空気が多い状態は、地盤が締まっていないことを示しており、足で踏みつけると足跡がついたり、このような地盤に家の基礎を作るとその重みで沈下が発生します。
地盤の沈下の種類
ところで、地盤の沈下の種類には、どのようなものがあると思いますか?
答えは以下をご覧ください。
1. 即時沈下
ある重さのものを載せると、その重さは地盤が支えることになり、その耐力を地耐力と言いますが、重さに対して地耐力が小さいと沈下が発生します。この沈下が、重さを載せたと同時に沈下することを即時沈下と言い、砂質系地盤で起こる現象です。
2. 圧密沈下
沈下の考え方は同じですが、ある重さのものを載せても即時沈下はせず、長い年月をかけて沈下する現象で、粘性土地盤で起こりやすいです。
特に軟弱粘土地盤では沈下が起こりやすいと言えます。
これは、ある重さが地盤に載ることで、地盤の中の水や空気が徐々に排出されて体積が萎む現象で、それが沈下として現れます。
3. 水浸沈下
雨が地盤に浸透することにより、地盤内の土粒子が移動したりして、体積が減少する現象です。身近なことでわかりやすく言いますと、植木鉢に土を入れて花を植え、水をあたえることを繰り返していると、土表面が下がっていきます。これが水浸沈下です。
これらの沈下が、均等に起こってくれれば家の傾きはないのですが、沈下が均等でなく、不均一に沈下した場合は家が傾いたり、建具が閉まらなくなったり、傾きの程度によってはめまいを発症するようなこともあります。
このように、不均一な沈下が発生することを不同沈下と言います。
不同沈下の原因は様々です。家が平家部と二階部があるような荷重が偏っている場合や、宅地地盤に切土部と盛土部の境目にある場合、また宅地地盤下の地層が傾斜し厚さが異なっている場合とか盛土層でもその中にがれき等が混入している場合、それと埋戻しや締固めが不十分な場合等があります。
以下の ”不同沈下の原因例(図)” を用いて、不同沈下の原因となる要因をご説明します。
出典:小規模建築物基礎設計指針(日本建築学会編)
また、上記傾きと居住者が感じる変状は以下のようになります。
出典:建築士のためのテキスト(日本建築学会編)
中岡 時春
地盤品質判定士会幹事、技術委員会委員長。中岡技術士事務所代表。ゼネコンの技術者として、主に造成地盤に関わる斜面安定や締固め、沈下等設計、施工の段階での問題点の抽出や解決及び粗粒材の特性推定法や粗粒地盤の締固め工法の開発に従事してきた。また、行政の職員として、土壌汚染対策や崖地崩落対策の設計、施工にも従事してきた実績がある。
現在は市民及び行政からの地盤に関わる相談に対応。わかりやすく丁寧な説明を心掛けています。
安全かつ快適な住環境づくりにお手伝いしていきます。