《地盤品質判定士コラム第16回》SWS試験のJIS改正のポイント
1.はじめに
スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)は,地盤の硬軟,締まり具合及び土層構成を評価するための静的貫入抵抗(荷重Wsw,半回転数Nsw)を求めるサウンディングです。皆さんご存じのように,SWS試験は今や宅地における標準的な地盤調査方法となっており,我が国で試験数が最も多いサウンディングです。この試験方法のJIS規格は1976年にJIS A 1211として制定され,1995年,2002年,2013年の改正を経て,今回の2020年10月の改正1)に至りました。今回の主な改正のポイントは以下となります2)。
- 試験名称を従来のスウェーデン式サウンディング試験からスクリューウエイト貫入試験へ変更した。
- ISO 22476-10:2017 Geotechnical investigation and testing – Field testing – Part 10: Weight sounding testとの整合を図った。
- 試験装置を手動式,半自動式及び全自動式に区分して,それぞれの試験装置及び試験方法を記載した。
- スクリューポイントの形状及び寸法を明確に規定し,その摩耗に対する許容値を記載した。
本コラムでは,これらの具体的な改正内容を示しますが,試験方法そのものに大きな変更はないことを始めにお知らせしておきます。
2.試験名称を変更した理由
今回の改正で最も大きな変更は試験名称です。変更の理由は以下の通りです。
この試験装置及び試験方法は元々スウェーデンで開発されたものですので,我が国では導入元の国名を考慮して旧規格までは「スウェーデン式サウンディング試験」という名称としていました。しかし,対応国際規格ISOでは国名が付けられていないこと,我が国では試験装置及び試験方法が独自に発展してISOとは異なるもの(スクリューポイントの形状,ロッド径,Nswの定義など)となっていること,我が国で長年蓄積された測定データに基づいて建築,土木での地盤(特に宅地)の設計体系が成り立っているため,試験装置及び試験方法をISOに合わせることができないこと,さらに海外での本規格の普及に当たっての混乱を避けることから,試験名称を「スクリューウエイト貫入試験」に変更しました(英語名はScrew Weight Sounding testで,略称は従来通りSWS試験のままとしています)。この名称は,国名を外し,ISOの名称にあるウエイト(荷重)にスクリュー(回転)を付加して試験装置及び試験方法がわかるようにしたものです(旧名称では初めての人には試験装置及び試験方法はイメージできませんね)。
3.試験方法の改正内容
3.1 試験装置に関して
旧規格までは手動式の試験装置のみが例示されていましたが,現在,我が国では半自動式及び全自動式の試験装置が広く普及しているので,実態に即して図-1に示す3種類の試験装置を例示しました(手動式のクランプ及びおもりの図は削除しています)。
また,スクリューポイント(SP),ロッド,載荷装置及び回転装置については次のように規定しました。
- SP及びロッドの材質は,具体的な指定を行わず,必要最低限の要求として「鋼製」とした。
- SPの形状と寸法を図-2のように規定し,先端から最大径までの長さを150 mmと明記した。
- 摩耗によって最大径が30 mm以下又は全長が185 mm以下となったSPを用いてはならないことを明記した。
- ロッドの質量を2.0 kg/m±0.5 kg/mとする規定を追加し(ISOに準拠),長さの規定は削除した。
- ロッドの直線性の確保として,直線軸からのずれは1 mm/m未満,ロッド接合部での中心からのずれは0.1 mm未満,ロッドを繫いだ状態での隣り合うロッドの角度のずれは0.005 rad未満とする規定を追加した(ISOに準拠)。
- 載荷装置によって載荷する荷重は,どの試験装置でも50 N,150 N,250 N,500 N,750 N及び1 000 Nを標準とする。ただし,全自動式では0 N~1 000 Nまでの任意の荷重をかけることができるものであってもよいとした(全自動式では制御装置によって機械的に任意の荷重を載荷して,より詳細な試験結果を得ることができるものもあるため)。
- 回転装置の1分間当たり回転速度は,手動式では30回転以下(従来通り),半自動式及び全自動式では15回転~40回転(現在市販されている試験装置の設定値を考慮)としたが,30回転が望ましいと規定した(ISOに準拠)。
3.2 試験方法に関して
旧規格の試験方法は基本的に手動式の試験装置を基にした記述でしたが,現在の試験装置の普及状況を鑑みて,手動式,半自動式及び全自動式の試験装置に応じた試験方法を記述しました。
<各試験装置で共通の内容>
- 地盤中の礫,転石,異物などによって回転貫入が進まない場合には,回転を一旦停止し,ロッドの頭部をハンマー,おもりなどで打撃して,回転貫入が進まないことが一時的ではないかどうかを確認する(既に実務で行っている打撃貫入を明文化した,ISOに準拠)。
<手動式>
- 自沈又は回転貫入の途中で,急激な貫入が生じた場合は,そのまま貫入させる(危険なため,除荷は行わない)。
<半自動式と全自動式の共通事項>
- 自沈又は回転貫入の途中で,急激な貫入が生じた場合は,一旦貫入が停止するまで荷重を段階的に除荷する。
- 受渡当事者間の事前の取り決めがあれば,載荷段階を500 N,750 N及び1000 Nとする場合も許容した。
<全自動式>
- 貫入速度が5 mm/s以下を自沈停止とみなしてもよいと規定した(現在の試験装置の設定値を考慮)。
- 貫入速度が80 mm/s以上を急激な貫入(自沈開始)とみなしてもよいと規定した(現在市販されている試験装置の設定値を考慮)。
3.3 その他
その他の改正内容を以下にまとめます。
- 用語及び定義として,自沈(回転を与えずに静的に貫入する状態),貫入長(地盤中に貫入したスクリューポイントとロッドとの合計長さ)を追加しました。後者はロッドの鉛直性が保たれない状態では,深度と一致しないため区別しています。
- 表層が硬質で貫入が困難な地盤の場合,又はロッドと地盤との間の周面摩擦力を低減させる場合には,必要に応じて事前削孔してもよいとしました(既に実務で実施していることを明文化した)。
- 貫入量1m当たりの換算半回転数Nswの算定式をNsw=Na/L(Na:貫入量L(m)に要した測定半回転数)に修正しました(旧規格では算定式にミスがありました)。
4.あとがき
改正内容のより詳しい内容は,JIS本文1)の附属書JBに掲載している新旧対照表及びJIS解説1)を参照して下さい。
現状では,国土交通省告示第1113号,学会・協会(公・民)などの指針,マニュアルなどの記述は旧名称(スウェーデン式サウンディング試験)のままなので,しばらくは旧名称を併記することになるかもしれませんが,既に各機関で新名称に変更されつつあるようです。
SWS試験は,本来は地盤の硬軟,締まり具合及び土層構成を判定するための簡易な地盤調査方法ですが,既に世の中に普及している全自動式の試験装置は短時間で精度よく試験が実施できるため,非常に有効な地盤調査方法といえます。新しいJISを契機に,SWS試験が宅地地盤の評価技術として正しく普及することが期待されます。
参考文献
1) 日本産業標準調査会:スクリューウエイト貫入試験方法(JIS A 1221:2020),日本規格協会,2020.
2) 大島,他:スクリューウエイト貫入試験方法(JIS A 1221:2020)の改正内容について,第56回地盤工学研究発表会,No.DS-6-11,2021.
大島 昭彦
地盤品質判定士会関西支部 支部長。
大阪公立大学大学院工学研究科都市系専攻。
地盤工学(粘土層の圧密沈下予測,砂地盤の液状化予測,大阪・神戸地域の浅層地盤モデルの構築,宅地の地盤調査法の開発など)を専門分野とする。
大学での教育・研究に加えて,地盤品質判定士として市民の相談に貢献したい。