《地盤品質判定士コラム第5回》市民からの地盤相談にはどんな相談があるの?

2022年6月22日

 地盤品質判定士会では地盤に関する市民からの相談を広く受け付けています。相談の種別は、擁壁、崖・斜面、家屋、宅地購入などさまざまです。受付は原則としてホームページ(以下、HP)からです。筆者が受付け窓口を担当している神奈川支部では令和3年度(2021年度)だけで166件もの相談がありました。その経験に基づき、相談の様子をお伝えします。

 本文が市民の方が相談を申込む際に、どのようなことに注意したらよいか、どんな資料や情報を提供すれば的確な回答が得られるか、などを知る機会として、また地盤品質判定士が相談員として担当する際の参考になれば幸いです。

【相談時のHPへの投稿文例】(実例を参考にモデル化)

相談内容の技術分類

①擁壁にひび割れがたくさんあり、心配です。

②自宅裏の急傾斜地が土砂災害警戒区域に指定されました。崩落しないでしょうか。

③建売住宅を購入する検討中です。予定の場所について、地盤沈下や大地震の際のリスクを教えてください。

④大雨で擁壁が崩れてしまいました。建物に影響しないか心配です。

⑤庭に穴が開いていますが、大丈夫でしょうか。

【相談の対象】

 主に個人の方で、自己の所有する宅地(購入予定を含む)を対象として、各種の地盤相談を随時受け付けています。ただし、『宅地地盤相談』は社会貢献的に行っていますので、事業者の方(個人事業主を含む)はご利用いただけません。またマンションの場合は、居住者のみなさんに「ワガコト」としていただくために管理組合からのみとし、管理会社の代行は受け付けていません。

 相談受付はメールを原則としており、所定のフォームからとなります。相談はおひとり様1件とし、メール・電話による簡易な相談は無料ですが、面談(対面またはリモート)および現地踏査(主として目視による外観調査)は有料となりますのでご注意ください。また、詳細調査あるいは評価書(所見・意見書・報告書等)の作成などのご相談にも応じます。その場合は、別途見積りとなります。

【相談に当たっての重要ポイント】

◆必須項目①相談対象の住所

 相談対象の場所の特定は、地盤に関する公開情報(地図、地質、土砂災害警戒区域等)を取得するうえで必須です。「住所(住居表示)」があれば場所が容易に特定(検索)できますが、購入案件の場合は住居表示が無いことも多く、地番を記入される場合があります。「地番」は一般には検索がしにくいので、案内図等を提示いただけるとありがたいです。地番と住所の違いは以下のとおりですが、「地番」=「住所」の地域もありますので、ご注意ください。

※地番=土地の場所、権利の範囲を表すための登記上の番号(法務局が定める)

※住所(住居表示)=建物の場所を表す番号(市町村が定める)

◆必須項目②相談の内容

何についてご相談をしたいのかが、よくわからないことが多くあります。

 冒頭の投稿文例では、心配なことはわかりますが漠然としており、窓口から問い合わせのメールと回答など何度かやり取りをして、ようやく確認できることがあります。相談対象の宅地および隣接地の状況、変状がある場合はその状況と経緯、相談の目的、などを簡潔に記載いただくと、対応までの準備期間が大幅に短縮されます。

◇必須ではないが重要な情報:写真および各種資料

 写真は現地の状況を示す重要な情報ですが、対象の部分(例えば擁壁の亀裂だけ)のみを添付されることをよく見受けます。相談に当たっては、全体像を把握したうえで当該の事象を見ることが重要です。周りを含めた全体系を撮影方向の異なるものがあると、状況を理解しやすくなり、そのうえで近接写真があると非常に効果的です。また、敷地図、建物・擁壁の図面などがある場合は、ぜひご提供ください。HPからの投稿の際にはデータの容量制限がありますので、どのような資料があるかを提示いただければ、受付けからの確認の返信時に送付していただきます。

【相談員の選任と回答】

 地盤品質判定士会は他に本業を持つ地盤の専門技術者集団であり、社会貢献的にご相談に応じているため、通常、相談内容が確定後、相談員の人選に1週間程度いただいています。相談員が選任されると、窓口から相談者と相談員双方にその旨を通知しますので、その後は相談員からの連絡を待って相互に日程調整して相談を進めていただきます。

 メール・電話および面談の場合、相談員は相談者からの提供情報と公開情報に基づき、地盤の専門家としての知見を加えて回答しますので、提供情報が重要です。また現地踏査では、上記に加え、目視による外観調査を行います。現地で得られる地盤情報および変状の状況は、きわめて重要で、場合によっては評価を大きく左右することがあります。

 相談員は、詳細な調査が実施されていない中で、限られた情報に基づき地盤の評価を行います。しかしながら、地盤は不確定要素が大きく、相談者の経済的な制約もあり、いつも最適な解決策を提示できるわけではありません。解決へ向けた道筋を相談者とともに考え、助言や提案を、その理由とともに示します。そのうえで最終的な判断は、相談者がそれらの中から選んでいただくことになります。

 以上、神奈川支部の例をもとに宅地地盤相談の現状をお伝えしました。本部あるいは他の支部では異なる部分もありますので、対象地域の支部または本部へお尋ねのうえご相談ください。

『宅地の地盤相談』

地盤品質判定士会 神奈川支部HP:https://www.hanteishi.org/kanagawa/contact/soudan/

地盤品質判定士会 本部HP:https://hanteishi.org/contact/soudan/

地盤品質判定士会 関西支部・中部支部・中国支部ほか

立花 秀夫

地盤品質判定士会神奈川支部長。ゼネコン技術研究所にて永年地盤関係の研究開発および施工支援に従事、大型重機土工専門工事業者、土木設計コンサルタントを経て2011年現役を引退。以後は要請に応じて、地盤工学および地盤品質関連の技術相談等のコンサルティングを行っている。2016 年地盤品質判定士会神奈川支部を立上げ、支部長に就任、現在に至る。地盤災害から命を守る会に所属、地盤災害を通じた社会貢献・地域貢献に関心。