《地盤品質判定士コラム第11回》異種基礎のはなし

1.建築構造物の基礎形式

 建物を建てる際に、地盤が軟弱な場合には建物に有害な沈下・傾斜する場合があり、安全に建物の荷重を地盤に伝達するための基礎を設置します。この基礎の形式は大きく分けて「直接基礎」と「杭基礎」があります。 建物の規模にもよりますが、比較的地盤が良好な場合(支持層)が浅い場合や軟弱地盤が薄い場合には直接基礎、軟弱地盤が厚く、良好な地盤が深い位置にある場合には杭基礎とするのが一般的です。

基礎形式の一例

2.異種基礎とは

 建物に高層部、低層部や地下部分がある場合、支持層が著しく傾斜している場合には、同じ建物の基礎に異なる基礎形式を併用せざるを得ない場合があります。 このように、「異種基礎」とは、建物を支持する基礎に、基礎構造、支持地盤、支持機構が異なるものを併用することを言います。

具体的には、

  1. 杭基礎と直接基礎の併用
  2. 支持杭と摩擦杭の併用
  3. 土質、層厚が異なる地盤で支持する基礎

等が挙げられます。

 杭基礎礎であっても、支持杭と摩擦杭を併用する場合、あるいは直接基礎であっても、同一建物で支持する地盤がエリアによって異なる場合等は、異種基礎に相当すると考えられます。この他にも、杭の材料や施工方法が異なる杭の併用も異種基礎と同じように扱われることがあるようです。

1. 杭と直接基礎の併用

 一見、このような異種基礎は、基礎に作用する荷重の大小や傾斜した地盤での支持層の深さに応じた合理的な方法であるようにも見えます。例えば、④のようなケースでは、荷重の小さい低層部の杭を摩擦杭とすることで、すべての杭を支持杭とするよりも経済的な仕様になるように思えます。

では、

「低層部を摩擦杭としても、荷重に応じた支持力が確保できれば建物を安全に支持できるのでしょうか?」

3.異種基礎の問題点

 異種基礎を併用した建物では、各エリアによって基礎形式や支持層もしくは支持層深度が異なる等の影響により荷重・沈下性状が異なるため、沈下量の差(相対沈下)が大きくなる可能性があります。基礎のそれぞれの部分が独立に沈下を生じると、上部構造には予想外の応力が発生し、建築物の障害の原因となるケースがあります。

したがって、先ほどの

「低層部を摩擦杭としても、荷重に応じた支持力が確保できれば建物を安全に支持できるのでしょうか?」

に対しての回答は、

「建物に有害な沈下が発生する可能性があります」

となります。

 異種基礎を併用する場合には、下の表に示すように、基礎形式の組み合わせ、基礎の形式・種類によって、障害が発生する可能性、設計の難易度が示されています。(参考文献:建築基礎構造設計指針)

 エリアによって接地圧(荷重を面積で除した圧力)が大きく異なるような条件で、直接基礎と杭基礎、あるいは支持層が異なる杭基礎を用いる場合には、相対沈下(沈下量の差)が大きく異なることで障害が発生しやすく、設計の難易度も高いと言えます。

 また、異種基礎を併用した場合には、地震の揺れによってねじれが発生しやすく、水平変位についても慎重な検討が必要であるといえます。

4.異種基礎の法的な扱い

 異種基礎に関しては、建築基準法で、「原則禁止」とされています。異種基礎を併用する場合は、地盤の沈下、変形に対して構造上安全であることを確認しなければなりません。

 一般的には、上部構造・基礎構造の一体解析を実施し、相対沈下が生じた場合の上部構造の応力を算定し、構造体力上の安全性を検証するなど対応を図ります。 建築基準法上、4号建築物(戸建住宅等の小規模建築物)は建築基準法上、構造計算を行う義務はありませんし、精度の高い解析を実施することは現実的ではありませんが、構造上の安全性の確認が不要ということではありません。

5.異種基礎となる場合の設計的な配慮

 異種基礎を併用する場合、どのような設計的な配慮を行う必要があるのでしょうか?

 まず、コストを優先した安易な異種基礎併用はできるだけ回避することです。地盤条件、荷重条件等から異種基礎の併用が回避できない、異種基礎を併用しないと著しいコストUPになってしまうケース等については、できるだけ相対沈下が少なくなるような配慮が必要になります。例えば、杭基礎については、コスト減ために杭本数を減らし、少ない杭に荷重が集中するような設計は避けるべきといえます。

 また、直接基礎部の支持地盤で液状化や圧密沈下が発生してはなりません。そのような場合は基礎形式を杭基礎に変更する、あるいは地盤改良等で液状化や圧密沈下を防止する等の対策が必要になります。

 いずれにしても、異種基礎を併用せざるを得ない場合には、沈下そのものを発生しないように配慮し、相対沈下を可能な限り抑制するなど、余力をもった設計が望まれます。

6.戸建て住宅で想定される異種基礎

 一般的な戸建て住宅等では、計画段階から異種基礎を併用するケースは少ないと思います。しかし、結果的に異種基礎と同じような状態になってしまうケースは十分に考えられます。

 下の図のように、軟弱地盤に施工した柱状改良(表層改良や杭状地盤補強も同じです)が一部、良質な地盤の到達していないケースや、埋戻し不良により直接基礎の支持地盤の性状が異なるケース等は異種基礎と同じく、局所的な沈下が発生し、建物が傾くと同時に、基礎のひび割れ、損傷が発生する可能性が高くなります。

 このような事態を回避するためには、左図では、柱状改良体をすべて同じ良質地盤に到達させる、右図では、埋戻し土を良質地盤に置き換えるか、改良する等の対策により、異種基礎に準じた状態は回避しなければなりません。

戸建住宅で想定される異種基礎に準じる状態

【参考資料】

  • 2015年版 建築物の構造関係技術基準解説書
  • 建築基礎構造設計指針
  • 小規模建築物基礎設計指針

小川 和也

技術士(総合技術監理部門、建設部門/土質及び基礎)、地盤品質判定士
旭化成建材株式会社所属。高度専門職(エキスパート)
ゼネコンの技術者として、大規模埋立地や各種土木構造物の地盤改良を担当。その後、杭メーカーにて杭基礎工法の開発、設計に従事。
地盤工学会や建築基礎・地盤高度化推進協議会等の学術団体での活動を通じ、地盤技術で社会への貢献を信条としている。